微熱が続く:医師が考える原因と対処法|症状辞典

微熱が続く

医療社団法人小磯診療所 理事長

磯崎 哲男 先生【監修】

微熱とは(わき)の下の温度が37.4度までの発熱のことをいいますが、人の平熱には個人差があるため、一般的には37.0~37.9度までの体温を微熱としています。微熱は日常的によく見られる症状であるため、軽く考えられがちな症状でもあります。ですが、微熱が何日も続く場合は思いもよらない原因が背景にある可能性があります。

長引く微熱は、次のような日常生活上の好ましくない習慣によって引き起こされることがあります。

ストレスや疲れが過度にたまることによって微熱が続くことがあります。
主な原因は自律神経バランスの乱れと考えられており、“心因性発熱”として近年注目を集めています。心因性発熱が疑われる場合にはメンタルクリニックなどで相談することも可能です。

心身にゆとりのある生活を送るには

現在社会に生きていくうえで、ストレスや疲れなどは避けられないものです。しかし、心因性発熱を防ぐためにも、日ごろから熱中できる趣味を持つなどしてストレスを発散できる方法を身につけ、睡眠や休息は十分に取るようにしましょう。

日常生活上の好ましくない習慣を改善しても微熱が続くときは、思いもよらない原因が背景にある可能性も考えられます。軽く考えず、一度は医師に相談するようにしましょう。

継続する微熱は病気によって引き起こされることがあります。具体的には次のような病気が挙げられます。

かぜ、気管支炎、肺炎

ウイルスや細菌の感染によるかぜから始まり、炎症が気道や肺に広がって気管支炎肺炎を引き起こした場合には微熱が続くこともあります。そのほかにも咳や(たん)、喉の痛みなどの症状が見られることも多いです。また、かぜの場合は3〜4日ほどで症状がよくなりますが、気管支炎肺炎の場合には1週間以上症状が長引くのが特徴です。

かぜ症候群
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気管支炎
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肺炎
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結核

結核菌に感染することによって発症する病気です。2週間以上咳が長引く場合には頻度は低いですが結核の可能性も考えます。感染してから症状が現れるまでの潜伏期間が数年に上ることもあるのが特徴の1つですが、発症すると咳や痰、呼吸苦などの呼吸器症状のほか、長引く微熱、体重減少、活動性低下、倦怠感(けんたいかん)などの症状が現れます。高齢者にごくまれに見られる病気ですが、典型的な呼吸器症状が現れないことも多々あり、発見が遅れることも少なくありません。

結核
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盲腸の先にある虫垂(ちゅうすい)という部位に炎症が生じる虫垂炎や肝臓で作られた胆汁を蓄える胆のうに炎症が起こる胆のう炎の場合にも微熱がみられることがあります。右上腹部や右脇腹あたりに痛みが現れることが多く、発熱以外にも吐き気・嘔吐などがよくみられます。激しい痛みなど微熱以外の症状が強いときには早めの受診が必要です。

虫垂炎
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胆のう炎
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尿路感染症(慢性腎盂腎炎)

慢性腎盂腎炎(まんせいじんうじんえん)とは、腎臓の尿がたまる部分(腎盂)に細菌が入り込み繁殖することにより、腎臓にまで炎症が及んだ状態をいいます。女性がかかりやすい病気で、頻尿や排尿痛、残尿感などの排尿症状とともに発熱をきたすことがあります。重症化すると脱水や全身の倦怠感が生じることもあります。

尿路感染症
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虫歯

虫歯で細菌感染による炎症が起こると、微熱の症状が現れることがあります。これを歯性感染症といいます。また、歯周病歯根膜炎などを原因に歯性感染症が生じることもあります。

前立腺炎

前立腺に細菌感染が生じる病気です。発熱や全身の倦怠感とともに、排尿痛や頻尿、下腹部痛などの症状が現れます。

前立腺炎
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ヒトの体温調節はさまざまなホルモンも関与しているため、次のようなホルモン分泌に異常を生じる病気によって微熱が続くことがあります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)

甲状腺は、体の新陳代謝を活性化する甲状腺ホルモンを分泌する器官です。免疫の異常や細菌感染などによって甲状腺のはたらきが異常に活発になって、甲状腺ホルモンの分泌量が高くなる“甲状腺機能亢進症”を発症すると、動悸、発汗、暑がりといった症状のほかに微熱が続くことがあります。

甲状腺機能亢進症
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バセドウ病
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妊娠、子宮外妊娠

妊娠すると、黄体ホルモンやhCGなど妊娠中特有のホルモン分泌量が増え、さまざまな体調の変化が現れるようになります。その1つが微熱の継続であり、妊娠の可能性を判断する手がかりとなります。

また、子宮外妊娠などもホルモン分泌の変化が生じるため妊娠初期特有の体調変化が現れ、微熱が続くことがあります。

妊娠
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異所性妊娠
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がんにはさまざまな種類がありますが、微熱が続くといった症状が見られるものも少なくありません。たとえば、白血病は血液中の細胞の1つである白血球ががん化する病気です。38℃以上の高熱が続くケースもありますが、微熱が続くことも少なくありません。また、肺がんや肝臓がん胃がんなど内臓に発生する一般的ながんは、体温を上昇させる物質の産生を促すはたらきがあります。このため、がんを発症すると体内で炎症が生じていないにもかかわらず発熱することがあります。熱の出方は人によって異なりますが、微熱が続くことも少なくありません。

がん
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感染性心内膜炎

血液中に入り込んだ細菌が心臓に達し、心臓を包む心内膜などに炎症を引き起こす病気です。発症すると突然高熱が現れることもありますが、微熱が続き、倦怠感、食欲低下、体重減少などの全身症状が引き起こされます。また、進行すると心臓の弁がダメージを受けてうまくはたらかなくなるため、心不全状態に陥り、息切れや動悸、呼吸苦などの症状が現れます。また、心臓内で血の塊ができやすくなるため、脳梗塞(のうこうそく)などを引き起こすことも少なくありません。

感染性心内膜炎
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伝染性単核球症

伝染性単核球症はエプスタイン・バーウイルス(EBV)に初感染することによって、発熱や喉の痛み、腫れ、リンパ節の腫れ、発疹(ほっしん)などの症状が現れる病気です。なかでも発熱の症状はよくみられ、1〜2週間続くこともあります。感染者の唾液を介して感染することが多く、乳幼児期に初感染が生じた場合には症状が出にくい一方、思春期以降に発症すると症状が現れやすいという特徴があります。

微熱はよく見られる症状であり日常生活も可能な程度であることが多いため、軽く考えられがちな症状です。しかし、なかには上で述べたような病気が潜んでいることもあるため、発熱が3〜4日以上続くときは注意が必要です。

微熱が続くこと以外にも何らかの症状がある、微熱が続くことで倦怠感などが増して日常生活に支障があるといった場合には、できるだけ早く医師の診察を受けるようにしましょう。

なお、受診の際はいつから微熱が続いているのか、微熱の継続以外にどんな症状があるのか、微熱が出るときはきっかけがあるのか、これまでかかった病気や服用中の薬はないかなど医師に詳しく説明するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。